「うわーっ!すごくたくさん浮いてるー。」

息子とボートに揺られてウトウトしていた時、同乗していたタイ人家族のお父さんが、周囲を見渡して上げる声に目が覚める。

「本当だ!たくさん見えるー!」

閉じていた目を無理やり開いて目を凝らすと、目的地の島が近づくにつれて海に揺らめくピンク色の物体を次々と目にしました。

そう、クラゲです。

「こりゃ、泳ぐのはやめだな。」

そうつぶやくお父さんの声を聞き逃さなかった私たちですが、未だクラゲに刺された経験のない者にはピンときません。

実際クラゲってどのくらい危険なんでしょうか?

この記事では、タイのビーチで気をつけたいクラゲについて、その危険度と予防方法、また刺されたときの対処法についてまとめてみました。

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タイの危険なクラゲ

まず最初に書いておきたいことは、世界に2,000種とも3,000種ともいわれるクラゲのうち、人間に対して何らかの影響を及ぼすことがあるのは約100種のみということです。

そして、クラゲに刺された場合でも、たいていの場合はちょっとした痛みやかゆみがある程度で、生命を脅かすものではないということです。

ただし、ごく稀に猛毒を持つクラゲに刺されるケースがあり、タイでは2008年頃から海水浴客などに対してに注意するよう喚起がなされてきました。

タイで確認されている危険なクラゲ上位3種類は以下のとおりです。

Box Jellyfish(ハコクラゲ)


情報源: Box Jelly Photo by Christine Visser — National Geographic Your Shot

タイ語でแมงกะพรุนกล่อง(メーン・カ・プルン・クロン)といい、いちばん毒性が強く恐れられているクラゲです。

よくインド洋、太平洋、タイ湾、アンダマン海の雨季に出現。

色は淡いブルーの半透明で、名前は傘の部分が立方体の形をしているところに由来しています。

傘のコーナーに部分から4~15本の触手(何かに触ったり獲物を捕らえたりするために使う、自由に動かせる器官)が伸びていて、それが3mに達するものも。

毒針が触手一本につき5,000本あると言われ、一匹で5~60人もあの世に送れてしまう量の毒を持ちます。

刺されると熱傷のような痛みとかゆみ、刺された箇所の皮膚のみみず腫れを起こし、血圧が通常より下がったり、心拍が不規則になったり、失神することもあるようです。

体長が大きいものに刺されるほど症状も深刻になります。

Irukandji Jellyfish(イルカンジクラゲ)


情報源: Irukandji jellyfish Photo by Pradeep Chitta — National Geographic Your Shot

北オーストラリアの海で発見され、イギリスでも目撃されています。

写真だとわかりづらいですが、体長約5mmと極小で見つけるのがとても困難です(触手は約90cm)。

体中に毒針が付いており、その毒はコブラの100倍ともいわれています。

刺されると、イルカンジ症候群と呼ばれる重篤な症状(まずその箇所がつったような感覚になり、背中と胸部の激痛、嘔吐、めまい、大量の発汗、心拍数の増加および血圧の上昇)を引き起こし、それが数時間~数日続くこともあります。

Portuguese Man O’ War(カツオノエボシ)


情報源: Velella and Physalia Photo by Andy Royston — National Geographic Your Shot

電気クラゲ(แมงกะพรุน=メーン・カ・プルン・ファイ)の異名を持ち、紫色、緑色か桃色の袋のような独特な形状をしたクラゲ。

その袋はプカプカと浮くことができるためのもので、世界中の海、特に北スコットランドの海で多く見られます。

タイでは、プーケットで初めて発見されました。

刺されるとムチで叩かれたような痛みを感じ、刺された箇所は腫れあがり、それが人により何時間、何日間と続く可能性もあります。

また、全身にだるさを感じたり、嘔吐、発熱、心拍数の増加、息切れ、筋肉のけいれんなどの症状が起きます。

また、すべてのドククラゲに共通することですが、特に強い毒を持つクラゲに刺された場合は心肺が停止したり、刺されるのが2回目の場合にはアナフィラキシーショックが起きることがあります。

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ハコクラゲに刺された人の体験談

実際にハコクラゲに刺された方が、この記事のために写真を提供してくださいましたので、ここにシェアさせていただきます。

2018年8月にサムイ島で休暇中だったNさんは、ビーチの膝くらいの深さのところで仰向けにプカプカと浮いて平穏な時間を楽しんでいたところをクラゲに襲われました。

突然、胸と腹部に焼けるような、それも酸か熱い油をかけられ、かなり酷いやけどを負ったような痛み。

数秒後に何かに襲われているということに気が付き、浮くのをやめてまっすぐ立ったところ、胸と腕に黒くヌルヌルするもの(あとになってそれがハコクラゲの触手だったということがわかるのですが)に取り巻かれているではありませんか!

息苦しさを覚えながらも、体に付いているその物体をつかんで投げ捨て、よろめきながら大声で近くにいた人たちにすぐに海から出るように促す。

とにかく息ができず、体の皮膚が剥がされているような感覚。

近くにいた女性がヤードム(タイの嗅ぎ薬)を差し出してくれ、それを吸い込むように言われて従ったところ、少しだけ呼吸が楽に。

その女性はまた、ホテルのスタッフにお酢を持ってくるよう頼み、それを体にかけ、まだ体を刺しながら毒を分泌し続けていた残りの触手をはがしてくれました。

15分後にやっと救急車が到着し、看護師がバイタルチェックをして酸素マスクをつけてくれた時、何とか生き残れそうな一縷の望みを抱くことができました。

救急車で病院に着くまでさらに15分ほどかかりましたが、医者には「まだ身体についている触手がある」と指摘され(*厄介なことに、ちぎれた触手でも、しばらくの間毒針を発射することができます)、さらに「今から12時間が山で、それを越えても72時間はクラゲの毒による余波があるかも知れないため要経過観察。」

その後、また酢を浴びて残りの針を抜く処置を行い、シャワーを浴びる頃には美人看護師さんたちに囲まれて幸せを感じる余裕も生まれたとのこと。

この体験談を綴ったブログは、「こんな出来事があったけれども、タイへの再訪を心待ちにしている」と締めくくられています。

 入院日数と治療費
メールで聞いたところ、この方の場合、病院での滞在時間は体内の毒が完全に消える36時間ほどで、かかった費用は1,500ドルほど(当時のレートで約169,000円)でした。
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クラゲに刺されないための予防法

クラゲに刺されないようにするために、いくつかの予防法をご紹介します。

  • 必ずブイ等で区切られている遊泳区域で活動する(高波で完全にクラゲの侵入を防ぐのは無理なようですが、なんの対策もしていない場所よりははるかに安全です)
  • アイランドホッピングのツアーでは、国立公園職員が駐留している場所やビネガースタンドの場所を確認する(ホン島のツアーでは、訪れたほとんどの島に酢の入った瓶が置いてありました)
  • 特にクラゲが交尾したり成長する雨季には、遊泳前にホテルのスタッフやツアーガイドにクラゲ発生状況を尋ねる
  • 雨が降った直後の海に入らない
  • 肌が露出をなるべく避けるため、ラッシュガードやウェットスーツ、マリンシューズ等を着用する
  • 浜辺に打ち上げられたクラゲにも毒針を発射する能力があるので、絶対に触れないこと

また、万が一刺されてしまってもすぐに対処できるよう、なるべく2人以上で海に入る(子どもは一人で遊ばせない)ことが望ましいです。

フード付きラッシュガードなら、首回りも守ることができます。

また、タイのビーチでも使用者が増えてきたマリン(ウォーターシューズ)は、けが防止にもなり、クラゲからも足を守ってもらえるので便利です。

刺されたときの対処法

もし、不幸にして、先ほどの体験談の方のようにクラゲに刺されてしまった場合にとても重要なことは、なるべく冷静な状態を保つということです。

応急処置

すぐに海からあがり、誰かにすぐに最寄りのクリニックや病院に連絡してもらってから、応急処置として

  • クラゲの触手が身体についていることが目視で確認できるようであれば、なるべく素手ではなくタオルやハンカチなどを当てて取る(軍手か手抜きのようなものがあればなお良い)
  • 海水で患部を洗い流す
  • 息苦しいようであれば酸素スプレー・吸入器を要請したり、前述のように周辺の人に嗅ぎ薬を借りて吸引する
  • 救護がなかなか来なくて痛みがひどく、触手が取れていることが確認できる場合には、患部を40℃くらいの温水(熱く感じるがやけどせず触ることができる水温)につけることで痛みが軽減する

お酢について

ハコクラゲをはじめとする箱虫綱には酢が有効で、毒針(刺胞)を不活性化させることができるため、タイでもクラゲに刺された際の応急処置に用いられています。

実際、クラビのホン島周辺ボートツアーに参加したとき、外国人女性が国立公園の保護官に一声かけ、ふくらはぎに酢をチュッとかけてもらっているのを目撃しました。

しかし、カツオノエボシなど、クラゲの種類によっては酢をかけるとかえって毒針を活性化させてしまうものもあるようです。

刺されたクラゲの種類がわからない場合は、地元のホテルスタッフ、ツアーガイドなどに指示を仰ぐようにしてください。

してはいけないこと

  • 刺された箇所にかゆみがあってもかいたりこすったりない(刺傷を悪化させる恐れがあります)
  • ペットボトルの飲料水や水道水など真水で洗わない(体内に入る毒素を増加させる恐れがあります)
 クラゲに刺されてから6時間が命運を分けます。
刺されてからすぐに医療機関で適切な処置を施してこの時間を乗り切れば、その後は早く回復できます。

タイのビーチで注意したいクラゲ:まとめ

以上、タイのビーチで注意したいクラゲについて書いてきましたが、ハコクラゲをはじめとする毒を持ったクラゲに刺されて危険な状態になるというのは非常にレアなケースですので、怖がることはありません。

クラゲは水族館で鑑賞するほど神秘的で美しい生物ですが、ビーチにお出かけの際はこの記事のようなことも起こりうるということを頭の片隅に留めておいていただきたいと思います。

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