
昨年10月14日、シリラート病院の16階の病室で前国王がお亡くなりになった翌日、僕は家族とプーケットでの休暇を終えて、シンガポールで行われた会合のため、早朝に一人タクシーで空港に向かいました。
運転手さんが見るからにやつれた表情で、
と尋ねてきました。
どう答えていいかわからなかった私は、
と正直な気持ちを伝えました。
空港で荷物を下ろしてもらい、運賃を渡した後、余計なお世話かと思いましたが、少し励ましてあげなければと思い、
と言って握手して別れました。
今日は公休日で、セブンイレブンも午後の早い時刻に閉店。前国王の棺が王宮から運ばれ、火葬場のサナームルアンで、世界の国賓が参列しての儀式の様子などがテレビで放映されるのを、朝からテレビをつけっぱなしで見ています。
日本の秋篠宮ご夫妻のお姿も確認できます。
それから1年が経ち、今日は25日から29日まで続く一連の火葬の儀式の本葬の日です。
葬儀の予定は次の通りです:
25日 17:30~ 王宮にて葬儀の準備
26日 07:00~ 王宮から火葬場まで葬送行進、17:30~ 火葬の儀式、22:00~本葬
27日 08:00~ お骨拾いの儀
28日 17:30~ 慰霊の儀
29日 10:30~ 僧侶への托鉢 17:30~ 納骨式
タイ国政府観光庁ウェブサイトより
報道によると、前国王に最後のお別れをしようと全国から20万人の国民の国民がつめかけ、近くのカオサン通りの安宿は地方から出てきた人たちで軒並み満室。
沿道で涙を流している人々を見ると、こちらもどうしてもこらえきれなくなります。
バンコクに来れない人たちのために、葬送の儀式は全国各地に設営された会場でも行われ、午後にはうちの近所の会場に家族で参列してきました。
12時に並んだ場合、献花できるのが16時30分と聞いていましたが、それよりはだいぶ早い時間に、プミポン国王が好きだったというマリーゴールドの花をたむけ、帰宅しました。
思えばこの15年、2度のクーデター、タイ国内での動乱、大洪水と、タイで様々な出来事に遭遇してきましたが、前国王の国葬という今回の出来事は、自分の中でいままでのタイでの経験の中で最も特別なものになるんじゃないかと思っています。
日常会話ができる程度のタイ語を話し、タイ料理に舌鼓を打ち、仲間にたまに「もうお前はタイ人だな」と茶化されていても、このタイの伝統的な儀式の様子を見ると、僕のような外国人がとても入ることができないような独特な世界を感じます。遠藤周作の「王国への道」を読んだのを思い出しました。
前国王のお母様、シーナカリン王太后がお亡くなりになった時、プミポン前国王は
というお話をされたそうです。
多大な業績を残し、国父と慕われタイ国民から絶大な尊敬を集めたプミポン国王。もうすぐタイの22時になります。
本葬の時間が近づき、本当に最後のお別れです。
正直な話、自分の心はいまとても複雑で動転しています。
自分はどこでどう死ぬんだろう、これからの人生何が起こるんだろう...何とも言えない不安に襲われ、目に涙が浮かびます。
でも、どんな困難が起ころうともそれを受け入れて、自分の人生に真摯に向き合っていかないといけないと考えています。