
今日付けのバンコクポスト誌に「タイでの子供のイジメ」が上昇傾向にあるという記事を読んでショックを受けました。
日本に次いでタイが第2のいじめ大国になった、ということが書いてあるではありませんか!
小5の息子が、英語の授業でいじめについての英語の冊子を読む練習をしていたのは偶然か、はたまたタイでもその問題がクローズアップされてきたからなのか...
記事を要約は以下の通りです。
- 幼稚園の頃から、子供がネットで見た暴力シーンの真似をするなどの行為が確認されている
- タイ全土で、60万人(約40%)の子供が学校でいじめを受けている
- 2010年の調査では、33%の子供がオンラインで他人をいじめ、43%が他人にいじめられたことがあると回答した
- いじめは、した側もされた側も暴力的な態度をとるきっかけになり、それが長期間続くこともある
- いじめられた子供はストレスを受けて鬱になり、社会生活に問題が生じる
- 酷い場合は他人や自分自身を傷つけ、自殺を試みることもある
- いじめをする子供は攻撃的な性格になり、罪悪感を感じなくなる
- また、暴力で物事の解決を図るようになり、犯罪者にもなりうる
- Child and Adolescent Mental Health Rajanagarindra Instituteでは、6~13才までのいじめ防止プログラムを開発中
タイでのいじめ
日本でのいじめ件数は小学校高学年から中学までが一番多いということですが、学生たちに「学校でいじめをしたりされたりということがあったか」聞いてみたところ、回答はまちまちでした。
また、日本の事情を知っている子もいて、
と話してくれた子もいました。
いじめの種類としては、
- 数人で一人をからかったり悪口を言ったりする
- 筆記用具や本などを取ったり隠したりする
- つねったり叩いたりする
また、子供の時は体格的なことやコミュニケーション能力など成長ペースが人それぞれなので、環境にうまく適応できなかったり時間がかかったりする子がいじめのターゲットになりやすいのも日本と同じです。
前述の「いじめを受けたことがある」という子によると、タイでは小学校1~4年生がもっとも起きやすく、高学年に上がるとSNSを使ったいじめに発展するということでした。
息子が受けたいじめのようなこと
息子はタイ語はネイティブだし、幼稚園のときから明るく朗らかと言われてきて、コミュニケーションとかもあまり心配はしていなかったんですが、2~3度いじめっぽいことを経験したことがあります。
1度目は、1年生の時に名前が変だとからかわれて傷ついて帰ってきた(日本人なので)ことがありました。
この学校では、「どんな宿題が出たか」や「担任からの連絡事項」などが書かれたいわゆる連絡帳があるのですが、その日の出来事を記入すると、翌日には担任の先生がホームルームで全員に注意してくれるなどすぐ対処してくれ、その辺は神経を使ってくれていることがわかりました。
2度目は3年生の時、水泳の授業のあとで体育の授業用のズボンがなくなり、その時は先生に伝えたところ、放課後クラス全員が息子のズボン探しに駆り出され(笑)、その日の出来事が担任→クラスの保護者代表→保護者全員に報告されました。
それも「誰かがやったんじゃないか」という前提ではなく淡々と事実が述べられているだけのものです。
結局ズボンは見つからずじまいだったんですが、事態はそこで収束し、その後モノがなくなるということはありませんでした。
また、4年生になって間もなく、昼休みに友達とかくれんぼをしていた息子が、立ち入り禁止区域に入った子を注意した(息子もハリーポッターにはまりすぎなところがある...)ところ、「もうお前とは遊ばない」と言われたらしいのですが、下校時に息子がたまたまその子の親に会ってその事を説明すると、翌日その子が謝ってきてそれで解決となりました。
息子はその子とは元々あまり気が合わないようでしたが、その日を境に急に親しくなり、いまではベストフレンドなんて呼んで、放課後に今流行の恐竜のカードゲームで遊んでたりしてます。
タイ人がいじめを未然に防ぐ方法
息子の学校では、新学期開始前に保護者を集めた説明会があり、当然タイ語オンリーできついです(笑)が、そのなかでもいじめについての説明がされています。
そして、各クラスの保護者から代表が選ばれ、その人が担任の先生と保護者の連絡係となります。
その後すぐに「〇年〇組保護者」のLINEグループができ、そこで連絡事項を確認できるのですが、何か問題があればそこで相談することができます。
入学時に学校の定める様々な規約を読んでサインしたのですが、その中に「親同士で仲良くすること」という項目があり、それもいじめをはじめとする様々な問題に一緒に対処できるためなのだとあとで納得。
面白いのは、お母さんたちがすぐ仲の良い友達になること。
よく子供を朝学校に送った後に朝食会や、学期末の授業参観を兼ねた発表会の前後に昼食会を開いたりしていて、中には子供が研修旅行に行ってる間に泊りがけで旅行に行ったりしているお母さんたちもいます。
クラスの保護者全員がこぞって一緒に旅行に行くわけではありませんし、特にそういったものに参加しなくても仲間外れになったりはしません。
連絡はもちろんタイ語ですが、どうしてもわからないときは英語で説明してくれるお母さんもいて助かっています。
また、小学生の子供2人を公立校に通わせているタイ人同僚にいじめについての対処法を聞いたのですが、
もし子供たちがからかわれたりしたときには、
- 送り迎えの時にその子に直接「うちの子が嫌がってるからそういうことはやめてね」と優しく声をかける
- やめない場合は再度その子に「やめてくれないとお巡りさんに言っちゃうよ」と声掛け(爆笑)
もしそれでも改善しない場合は、担任と子供の親に相談するという「オプション」もあるけど、たいていは「お巡りさん」でストップするようです。
タイの警察官は給料は安いけど権力は持っていますからね。まだ小さな子供にとっては威圧感があるんでしょうか?
基本的にタイ人は争いを好まず、穏便に解決を図るのが常なのでこんな感じで収まるようですし、親が子供に「やられたらやり返せ」と教えることはないそうです。
もちろん、これはあくまで一般的な話で、家庭によって親子関係が希薄だったり複雑だったりすると話は別です。
とにかくコミュニケーション
タイの学校が日本の学校と大きく違うのは、親が子供の送り迎えをすることですが、これって何気ないことでもかなり重要ではないかなあと思います。
私も、どんなに仕事が忙しいときでも朝起きて車で息子を学校まで送っていますが、子供と話しながら何か変わった様子がないか観察できますし、夕方妻が迎えに行く際にはクラスメートのお父さんお母さんと話もできますし、何かあればLINEグループで相談できます。
なにかトラブルが起きたとき、子供たちですべてなんとかしなさいというのは難しいですが、
- まず子供が親や先生にちゃんと何があったのか伝えることができ、
- 親は子供の話を聞き、感情的にならずに事実をしっかり把握し、先生に対処を依頼する
- 親同士でも交流を図って打ち解けた話し合いができるようにしておく
- 子供たちには何が問題でどうしたら解決できるか考えさせる
といった縦横のコミュニケーションがちゃんと図れれば、子供を自殺に追いやるなんてことはないと思うんですが。
うちはとにかくタイに住まわせてもらっているという態度で、些細なことで目くじらを立てず、少ないタイ語と英語のボキャブラリーを総動員してできるだけコミュニケーションを図り、人の助けを借りればちゃんとお礼をいい、そんな感じでこれまでやっています。
まとめ
以上、詳しいデータこそありませんが、タイでのいじめに対する学生たちの声と、現地の小学校に子供を通わせている親の体験談でした。
冒頭のバンコクポスト紙には具体的にどういう調査が行われたか書いてありませんでしたが、息子が通っている学校では親がまだ他人の子供を注意していることもありますし、ちょっとしたちょっかいやいたずらがいじめに発展しないような作用が働いている印象です(正確には、何かをされた方が精神的な苦痛を感じたらそれはもう「いじめ」というのですが)。
しかし、タイもそのうち「うちの子が一番」っていう自分本位の親、俗に言うモンスターペアレントが出てくるかもしれません。